「Liebenswert」●梅視点・超短編













こうして幸せそうな寝顔を見ていられるのは。




窓から月明かりが差し込んで
隣で寝ているお前の姿がはっきりと見えた。
少し離れていた私は
腕で自分の身体を手繰り寄せて近付いた。

眠っているお前に表情があるわけでは無いけれど
こうして見ていると
落ち着いている様な、安堵している様な
そんな表情に見えて来て嬉しくなる。

自ずと、ほんの少し開いた唇に目が行った。
小さくて、薄い唇はあどけなさを強調しているのに
視線を奪われ、目が離せなくなってしまって苦笑する。


そっと唇に指を伸ばすと
こちら向きに鶴紗が寝返りを打って
伸ばした指に、柔らかく ふにり と触れた。
こんな風に指でお前の唇に触れるなんて無かったから
その感触に、温度に、少しの湿りが新鮮だ。
指に微かに掛かる寝息が、生きているのだと安心させる。

少しだけ指に力を入れて押すと
柔らかい弾力が気持ち良くて、思考が奪われる。
このまま、この感触を感じ続けていたい。
そう思っていると。


『……まい?』


鶴紗は、触れられた事で浅く目を覚ましてしまった。
ゆっくりと瞼が薄く開いて
鈍く光る紅い瞳が私をぼんやりと見ている。
起こすつもりが無かった私は


「ごめ……」


思わず謝ってしまう。
別に悪い事などしていないけれど
意識の無いお前に同意無く手を出しているような気持ちになった。
するとお前は、少し意地悪そうな表情をして


『まいは、そんな事しか考えてないの?』


指を当てられたままの唇で言われると
吐息と、ただ触れただけとは違う動きの感触が指先に当たって
神経がそこへ集中する。

そうじゃない。
単に唇に目を奪われていただけだ。
だけどきっと、それだけじゃないんだろう。
心を当てられた、そんな気持ちで苦笑した私は


「すごく綺麗で、触りたくなった」


素直に思いを伝えた。
一瞬、それを聞いて目を丸くした鶴紗は
すぐに、嬉しそうな表情をして


『指だけで、良い?』


「……ズルいな鶴紗は」


『寝込みを襲う方がズルい』


「だな」


今度はちゃんと、起きて向き合っている時にするべきだな。
そう誓って。
今度はもっと直にお前を感じられる自分の唇を
ゆっくりゆっくり近付けて行った。









●fin.













●あとがき●



『Liebenswert』ドイツ語

愛おしい・愛すべき・かわいらしい

などの意味があります。
そのまんまです。

愛しくて愛しくて仕方ない相手が
更に綺麗に見えてしまったら
どうしようもなくなるだろうな、みたいな。

この梅は、鶴紗が可愛くてしょうがない世界の梅。
これ位 想って欲しいものですけどね_:(´ཀ`」 ∠):_


最初の一文が、どうにも違和感ありありだけど(苦笑
穏やかな表情をして、しかも無防備に自分の横で
好きな人が眠っているという状況に対して
梅が思った言葉、という感じなので
削除する事無く出しています。
まぁ。毎度、何かを書き出す時に、書きたい事の要約を書いてるので
ただのクセですな、書かないと何書きたいかすぐ忘れる…。



どこかで見た事のある様な文章だったので
出そうか否か躊躇っていたのですけど
かなりの月日も相当経った事だし(書き始めは10月末…)
良い機会なので出すだけ出しておこう!と。









●拍手お礼●


まさかコレを書ける日がまた来るとは思いませんで……

先日、今年に入ってから一度も叩かれる事の無い
まっさらな拍手画面を見ていたら
もう誰が来る事も無いだろうと落胆して
戻す事も無いだろうと思って一度撤去して。
で、誰もいないなら別に出してても良いよなと
パンダのアイコンがお気に入りなので再度こっそり下部に出してました。

つい先程、なんとなく拍手通知見てたら

………( ゚д゚ ) アレ?


ありがとうございます。
理由は何でも構わんのです。
軽くでも、手が滑ったでも、お気持ちがこもっていても
押された事は(拍手サイト側の手違いで無ければ)事実なのです。


3/26


一拍手頂きました。
もう無いと思っていたものが目の前に現れたら
不思議な気持ちになるものですね……
アクセス解析も見なくなったので
わざわざこんな辺境ブログに今更
誰かが来てくれてるなんて思いもよりませんでした。
お礼を兼ねて、こちらの作文を掲載させて頂きました

優しい御方、ありがとうございました(* ´ー`)



……お礼になれば良いけれど(:3_ヽ)_



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