「心付く」●鶴紗視点
・
●
「お!鶴紗はっけーん!」
『うわっ』
しゃがんで猫と戯れていた私の背中に
大声と共に梅様が背中合わせに、ぶつかり気味でくっ付いて来た。
私が驚いて大声を出した瞬間
折角懐き始めていた猫が、慌てて逃げて行ってしまった。
なんて事をしてくれるんだ。
『梅様、重い』
「気にするな」
『急に何ですか』
「お姉様が妹にジャレつくのは普通だろ」
梅様の行動は、いたずらも伴った じゃれ付きであって
良く見る姉妹がこんな事をしているのを見た事は無い。
などと言ってみた所で、確信犯のこの姉は何も感じないだろう。
ふぅ、と息を一つ吐いて、諦めて付き合う事にした。
お互いに、芝生の上で体育座りになり
お互いが体重を、合わせた背に少し掛けて話し続ける。
梅様のぬくもりが背中越しに感じられて
少し喜んでいる自分が居た。
『楽しそうですね』
「そうか?そりゃあ可愛いシルトに会えたからだろ」
違う。
そう、直感で分かった。
表情は分からないけれど、こんな浮かれた声を出すのはきっと。
『夢結様、ですか』
「なっ……」
『やっぱり』
一柳隊が結成されたあの日の、浮かれ切った梅様を思い出す。
梨璃の誕生日に託けた、親友……と呼んでいる人の為の演技と
込められた深い想いに気付いた者は
他人の気持ちに疎い人間の揃った一柳隊の中で
私を含め数える程だろうけれど。
「やっぱり、って何だ」
『分かりやすいです』
「うーん……梅のシルトは勘が鋭いゾ」
結局、嘘の吐けない素直なこの人は、こうしてすぐ種明かしをする。
そこが愛すべきキャラクターではあるけれど。
「この間のパーティーで打ち上げてた花火を
誘ってくれた夢結と見に行ったんだ」
『知ってます』
「うん、それが本当に……花火が綺麗でさぁ……」
後頭部を、私の肩に預けて天を仰ぐ梅様の
吐息交じりの、うっとりとした声を感じて
それがきっと、花火では無い方の色香の事なのだと
猫がじゃれるように刷り付けて来た、頭のその浮かれ具合で理解した。
『良かったですね、見られて』
「ああ」
『梅様はきっと、この先ずっと何も変わらないんでしょうね』
「ん?まぁそうだな、梅は変わらないゾ、安心しろ」
笑いながら話すその言葉はきっと
私では無いあの方を想い続ける誓いのように聞こえる。
今、傍に居るのは私なのに、私はまるで必要無いかのようで
心の中が何となくモヤモヤして来て困惑する。
「鶴紗、いいかげん梅をお姉様って」
『まだ慣れないです』
「まぁ……無理強いはしないけどさ」
あなたを姉と呼びたく無い。
照れでも不慣れでも無く、ただ
あの人のシルトと。梨璃と。
同じ呼び方をして欲しいだけだと気付いているから。
最初からちゃんと分かっていたんだ。
この人はあの方だけを想っているのだと。
それを知っているくせに
真剣に向き合ってくれたあなたと契りを結んだ瞬間
自分がそれに勝った様な錯覚をしてしまった。
そんな事、ある訳無いのに。
「この間、夢結と2人で何話してたんだ?」
『……夢結様に聞いたらどうですか』
「無駄だろ、夢結はそういう事は話さないゾ」
気の良い、後輩想いの先輩が
手のかかる私を妹にして安心させようとしただけ。
心の中には、たった一つの大切な存在がある。
その心の中に、私は居させても貰えない。
ちゃんと分かっている。
この人は、例えどんな縛りをされようとも
心と共にどこまでも自由で
こんなにも親しく話せる様になっても
体温を感じられる位傍に居ても
私だけのものにはならないのだと。
なのにこんなにも
あなたの《特別》になる事に焦がれるのは何故なんだ。
『あ、れ?』
「どうした鶴紗……えっ!?」
『なんで』
「ちょっと待て、ハンカチハンカチ……」
ほろほろと零れ落ちる涙と
ぼやけて行く視界に、私自身が驚いていた。
こちらを振り返り、こんな様子になった私を見て
慌てた梅様は、制服のポケットを探り
ハンカチを取り出して私の頬に当てた。
「ほら、涙拭け。どうしたんだ?」
『……』
「よしよし」
触れられたハンカチの香りと
頭を撫でられるその手の温もりが
更にとめどない涙へと変わってしまう。
困り果てている様子は声で分かったものの
梅様の表情は、ぼやけて何も分からない。
こんな時に優しくしないで。
余計に、今迄知らなかった気持ちが鮮明になって溢れて来てしまう。
たった今、ようやくはっきり気が付いた。
何の見返りも無い、報われる事の無い独りよがりの想いを。
私はあなたに恋をしたんだ、と。
●end.
●あとがき●
■シブよりコピペ ↓
「心付く」=『愛情や関心が生じる。執心する』
の意味で付けました、古語みたいです。
『価値』とほぼ同じようなシチュエーションですが
こちらの鶴紗は
梅に少し特別な感情を持っている、という てい で書いたので
ようやくその感情が好意・恋だと気付いた
という、結末が違う話になっています。
完全な片想いから両想いになれるかは未確定ですが
『価値』のように
きっぱり関係を断ち切って去る、というよりは
まだ救いがあるんじゃないかと。
ってコトで。
こちらのブログでは読みにくいという方は
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21701951
こちらでどうぞ。
ブクマをして頂けたとしても、私の方からチェックする事はありません
身バレがイヤだという方も大丈夫です
そちらにご迷惑をお掛けする事もございませんのでご安心を。
なので何か反応下さい(* ´ー`)
●たづまい雑記というか愚痴●
今日は楽しいひなまつり~♪
だというのに。
さっきラスバレで、梅のボイスを聴いてたらば。
ゆゆゆゆゆゆゆゆ、うるっせ~~~っ(怒
お雛様まで夢結にカブせて来るなっての。なぁにが『黒髪』だ……
いつもの、夜のお風呂場ボイスも夢結の話だし
春のボイスに変わっていたので
入学式の、夢結を取り合うって話になってるし
ほんと梅は夢結の事ば~~~っかり言うんだよなぁ。
これで気付かない夢結も夢結だけど
これだけアピールし続けてる梅も梅だなと
なんかもう、切ない……_:(´ཀ`」 ∠):_
これだから、シュッツエンゲルの契りなんて
たづまいカプの希望を持たせるようなイベントをして欲しく無かったんだ。
猫と戯れてる可愛い先輩後輩で十分じゃないか
そこから、たづまい好きは勝手に妄想して
楽しく幸せに過ごす2人を描くから。
あのイベが無かったらこんな気持ちにゃならなかったのに
公式め、ホントちゃんと責任取れよぉ……
まだまだ、ゆゆまい傷心の管理人でございます。
自分を癒す話が書ければ良いのに、まだ無理よ……
ではでは。
また、もしもお話が書けたらその時にお会いしましょう
今は何もございませんあしからず。
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「お!鶴紗はっけーん!」
『うわっ』
しゃがんで猫と戯れていた私の背中に
大声と共に梅様が背中合わせに、ぶつかり気味でくっ付いて来た。
私が驚いて大声を出した瞬間
折角懐き始めていた猫が、慌てて逃げて行ってしまった。
なんて事をしてくれるんだ。
『梅様、重い』
「気にするな」
『急に何ですか』
「お姉様が妹にジャレつくのは普通だろ」
梅様の行動は、いたずらも伴った じゃれ付きであって
良く見る姉妹がこんな事をしているのを見た事は無い。
などと言ってみた所で、確信犯のこの姉は何も感じないだろう。
ふぅ、と息を一つ吐いて、諦めて付き合う事にした。
お互いに、芝生の上で体育座りになり
お互いが体重を、合わせた背に少し掛けて話し続ける。
梅様のぬくもりが背中越しに感じられて
少し喜んでいる自分が居た。
『楽しそうですね』
「そうか?そりゃあ可愛いシルトに会えたからだろ」
違う。
そう、直感で分かった。
表情は分からないけれど、こんな浮かれた声を出すのはきっと。
『夢結様、ですか』
「なっ……」
『やっぱり』
一柳隊が結成されたあの日の、浮かれ切った梅様を思い出す。
梨璃の誕生日に託けた、親友……と呼んでいる人の為の演技と
込められた深い想いに気付いた者は
他人の気持ちに疎い人間の揃った一柳隊の中で
私を含め数える程だろうけれど。
「やっぱり、って何だ」
『分かりやすいです』
「うーん……梅のシルトは勘が鋭いゾ」
結局、嘘の吐けない素直なこの人は、こうしてすぐ種明かしをする。
そこが愛すべきキャラクターではあるけれど。
「この間のパーティーで打ち上げてた花火を
誘ってくれた夢結と見に行ったんだ」
『知ってます』
「うん、それが本当に……花火が綺麗でさぁ……」
後頭部を、私の肩に預けて天を仰ぐ梅様の
吐息交じりの、うっとりとした声を感じて
それがきっと、花火では無い方の色香の事なのだと
猫がじゃれるように刷り付けて来た、頭のその浮かれ具合で理解した。
『良かったですね、見られて』
「ああ」
『梅様はきっと、この先ずっと何も変わらないんでしょうね』
「ん?まぁそうだな、梅は変わらないゾ、安心しろ」
笑いながら話すその言葉はきっと
私では無いあの方を想い続ける誓いのように聞こえる。
今、傍に居るのは私なのに、私はまるで必要無いかのようで
心の中が何となくモヤモヤして来て困惑する。
「鶴紗、いいかげん梅をお姉様って」
『まだ慣れないです』
「まぁ……無理強いはしないけどさ」
あなたを姉と呼びたく無い。
照れでも不慣れでも無く、ただ
あの人のシルトと。梨璃と。
同じ呼び方をして欲しいだけだと気付いているから。
最初からちゃんと分かっていたんだ。
この人はあの方だけを想っているのだと。
それを知っているくせに
真剣に向き合ってくれたあなたと契りを結んだ瞬間
自分がそれに勝った様な錯覚をしてしまった。
そんな事、ある訳無いのに。
「この間、夢結と2人で何話してたんだ?」
『……夢結様に聞いたらどうですか』
「無駄だろ、夢結はそういう事は話さないゾ」
気の良い、後輩想いの先輩が
手のかかる私を妹にして安心させようとしただけ。
心の中には、たった一つの大切な存在がある。
その心の中に、私は居させても貰えない。
ちゃんと分かっている。
この人は、例えどんな縛りをされようとも
心と共にどこまでも自由で
こんなにも親しく話せる様になっても
体温を感じられる位傍に居ても
私だけのものにはならないのだと。
なのにこんなにも
あなたの《特別》になる事に焦がれるのは何故なんだ。
『あ、れ?』
「どうした鶴紗……えっ!?」
『なんで』
「ちょっと待て、ハンカチハンカチ……」
ほろほろと零れ落ちる涙と
ぼやけて行く視界に、私自身が驚いていた。
こちらを振り返り、こんな様子になった私を見て
慌てた梅様は、制服のポケットを探り
ハンカチを取り出して私の頬に当てた。
「ほら、涙拭け。どうしたんだ?」
『……』
「よしよし」
触れられたハンカチの香りと
頭を撫でられるその手の温もりが
更にとめどない涙へと変わってしまう。
困り果てている様子は声で分かったものの
梅様の表情は、ぼやけて何も分からない。
こんな時に優しくしないで。
余計に、今迄知らなかった気持ちが鮮明になって溢れて来てしまう。
たった今、ようやくはっきり気が付いた。
何の見返りも無い、報われる事の無い独りよがりの想いを。
私はあなたに恋をしたんだ、と。
●end.
●あとがき●
■シブよりコピペ ↓
「心付く」=『愛情や関心が生じる。執心する』
の意味で付けました、古語みたいです。
『価値』とほぼ同じようなシチュエーションですが
こちらの鶴紗は
梅に少し特別な感情を持っている、という てい で書いたので
ようやくその感情が好意・恋だと気付いた
という、結末が違う話になっています。
完全な片想いから両想いになれるかは未確定ですが
『価値』のように
きっぱり関係を断ち切って去る、というよりは
まだ救いがあるんじゃないかと。
ってコトで。
こちらのブログでは読みにくいという方は
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21701951
こちらでどうぞ。
ブクマをして頂けたとしても、私の方からチェックする事はありません
身バレがイヤだという方も大丈夫です
そちらにご迷惑をお掛けする事もございませんのでご安心を。
なので何か反応下さい(* ´ー`)
●たづまい雑記というか愚痴●
今日は楽しいひなまつり~♪
だというのに。
さっきラスバレで、梅のボイスを聴いてたらば。
ゆゆゆゆゆゆゆゆ、うるっせ~~~っ(怒
お雛様まで夢結にカブせて来るなっての。なぁにが『黒髪』だ……
いつもの、夜のお風呂場ボイスも夢結の話だし
春のボイスに変わっていたので
入学式の、夢結を取り合うって話になってるし
ほんと梅は夢結の事ば~~~っかり言うんだよなぁ。
これで気付かない夢結も夢結だけど
これだけアピールし続けてる梅も梅だなと
なんかもう、切ない……_:(´ཀ`」 ∠):_
これだから、シュッツエンゲルの契りなんて
たづまいカプの希望を持たせるようなイベントをして欲しく無かったんだ。
猫と戯れてる可愛い先輩後輩で十分じゃないか
そこから、たづまい好きは勝手に妄想して
楽しく幸せに過ごす2人を描くから。
あのイベが無かったらこんな気持ちにゃならなかったのに
公式め、ホントちゃんと責任取れよぉ……
まだまだ、ゆゆまい傷心の管理人でございます。
自分を癒す話が書ければ良いのに、まだ無理よ……
ではでは。
また、もしもお話が書けたらその時にお会いしましょう
今は何もございませんあしからず。
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