「心つないで(Herzen verbinden)」君恋3●1,2









●1






手を繋ぎたい、お前と。
そう思った瞬間。
私の手はお前に伸ばせなくなってしまった。







「これ、どうかな?」


どこから仕入れて来たのか、見た事の無い猫のおやつを片手に
少しずつ距離を詰めながら最近狙っている猫に近付く鶴紗。
まぁ殺気は出していないし、おやつに興味津々に見えるし
放っておいても上手く行きそうな気がする。
猫一匹と可愛いネコ一人。
邪魔しないように、少し遠くの木の下に座って寄り掛かり
そんな様子をぼーっと眺めていた。


申し合わせたわけでも無く、気が付けばそこに鶴紗が居る。
そんな気負わない状況が想像以上に続いていた。

まぁ
相変わらず鶴紗は猫との逢瀬に夢中だけれど。
まぁ
幸せそうな鶴紗を独り占めして見ていられる状況は
私にとっても幸せである
……ハズなんだけど。


「……まい?」


あまりに私がぼんやりしているからか、鶴紗から私の方に近付いて来た。
声を掛けて私を気にしてくれた事は嬉しいけれど
今はそんな気分に まるでなれなかった。


「ん?どうした鶴紗?」

「え?……いや、何でもない」

「そか。ほら鶴紗、あっちからまた一匹来たぞ?」

「あ!本当だ……触らせてくれるかな」

「頑張れ~」

「うん。まいに言われたくない台詞だけど」


ぼんやりしている時でも、猫達は私の周りに寄って来て
私もそんな猫達を気ままに撫でていたからだろう。
私を心配、というよりは猫達を見たかったのかもしれないな。


また別の猫に向き直り、新たに挑戦しようとする鶴紗の背を眺めながら
今朝の事をぼんやり思い出していた。









●2







「おー鶴紗ぁ!」

「……声大きい。耳痛い」


登校中に鶴紗に逢う事がなかなか無いし
とにかく嬉しくて思わず全力の声を出してしまった。
目立つのを嫌うヤツだから、こういうのはどうかとは思ったけれど


「中々こんな時に鶴紗に逢わないから嬉しくてさ」

「確かに。ごきげんよう、梅様」

「おーごきげんようだ鶴紗」


形ばかりは先輩後輩の挨拶を交わして
自然と隣を歩くと、特に気にする様子も無く歩き続ける鶴紗。
普段だったら、周りに大勢人が居る中で、他人とべったり歩くなんて
苦虫を噛み潰したような表情をして早歩きで避けるだろう。
ちょっとした優越感で、更に私の幸せ気分が上がり続ける。

それはそうだ。
私達は、好き合っているんだから。


「何ニヤニヤしてるの?気持ち悪……」

「ニヤついてたか?まぁ良いだろ?」

「……まいなら何でも大抵の事が普通に思えるから不思議だ」


どんな他愛無い反応も言葉も嬉しい。
好きな人の横に、何の衒いも無く居られるなんて考えた事も無かった。
自分の意思では止められないニヤニヤを放置して
鶴紗の可愛く動く腕と手を眺めていたら
そのまま、ただ自然に無意識に自分の腕が伸びて
その手に触れようとした瞬間。


説明のしようの無い不思議な気持ちに襲われて
慌てて腕を引っ込めてしまった。


「……?」

「……今度は目がまんまるだ、大丈夫?」

「ん?ああ、だいじょぶだいじょぶ」

「ぼんやりしてると遅刻する。急ごう」

「そうだな」


早歩きで先を行く鶴紗の、更に大きく振っている腕を眺めながら
自分が躊躇してしまった理由が
何となくだけれど……すぐ思い当ってしまって
それ迄幸せ気分だった頭の中は、一瞬にして色が変わってしまった。




記憶と習慣とは厄介なモノで……
今迄片想いで願いが叶った事も無く
ふざけて手を取ったり抱き付いたりは出来るくせに
本気で相手を「欲しい」と思う事が、私には何か罪悪めいていて
とても縁遠い物の様な気がしていた。
両想いになれるなんて考えた事も無かったからだ。


私には……気持ちを必死に抑えて誤魔化し続けていた
一方通行の期間が長過ぎた。
今更そんな心の習慣を変えようなんて無理なんだと
改めて気付いてしまった……難儀なものだな。


あの時、心のままに鶴紗を抱き締めたり口付けたりしていた
能天気な自分が、今は羨ましくて仕方が無かった。
本気なのだと、お互い同じ想いなのだと分かったあの時から
そんな現実を得られた、その後の行動の「答え」が
本当は何一つ無い事に気が付いて……心がモヤモヤしてしまう。





私には。
お前を大切にしたい。
その答えひとつしか無いのにな。









●●つづく。











●●あとがき●●



梅視点・長編。
「君に恋に落ちた」から続く3作目。

題名を、「心つなぐ」から『心つないで』に変更。
分かりやすいように、ドイツ語と日本語を逆に表記。

シブ用のページ分け・1と2を一気に出しました。


と……変更点が多過ぎて、余計に訳が分かりませんな_:(´ཀ`」 ∠):_
すみませぬ。




さて。

前回の2作目で、近付いたハズの気持ちを
極端に離してみました。

梅は純粋に、でもずっと言わずに人を想っていたのに
そんなにあっさりと、次の想い人と一緒に
何の心のわだかまりも無く居られるのか?
という所から、気の弱くなった梅の話を書いてみました。

好きなのに、こんな態度取ってしまう
気弱な梅ってのも可愛いと思うんですよね(台無し)
全部で6千字程度なので、あっさり終わります
読んで頂けると嬉しいです(´ω`)










●●雑記●●


管理人のひとりごと。
閲覧注意。








今年に入る前からですが
まぁ、何も書く気になりません。

ちょっと残念な事があって
精神的に落ち込んで、書く気がしないのもあります。
んでも……それもあるけど

やっぱり2人の結婚も
なんとなーくやる気が無くなった要因かもしれません。

二次を書く理由って
公式で語られなかった余白の部分を
妄想して楽しむ為にやっているのが大きいので
余白も何も、姉妹契約を結んでいないことが

管理人が好き勝手やって楽しんでいた理由(アホ

なので
契約してしまえば、大きな余白が全部埋まってしまい
妄想する余地が無くなった気がするのですよね……

ま。
だとしても、私は私の萌えを書いていたいので
適度に公式も取り入れつつ
今まで書いていた2人も基本にしながら
続けてみたいと思ってます。



ああ。
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やる気の種を下さい。






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