「Schatz」●梅視点・短編
















今日は私が、いつもの鶴紗のように
トートバッグを持ってこの場所に居る。
そう。
あの日シュッツエンゲルの契りを結んだこの場所だ。
今日はいわゆる、2人っきりのデートだな。
楽しみで仕方が無い私は
ついつい約束の時間より相当早く着いてしまった。


自然と周囲に寄って来た、可愛い仲人達と
戯れている内に来るだろう。
木に凭れて立っている私の足元で、構って欲しくて堪らない
そんな表情をして目を輝かせて見上げている。
さて、どいつと遊んでやろうか。
そう思っていると。


『……はぁ、はぁ……お待たせしました』

「へ?まだ約束の時間じゃ……」

『はぁ……まいさ……ええと、お姉様こそ』

「ついつい楽しみで早く来ちゃっただけだゾ」

『楽しみ……まぁ、私も、そんな所です』


荒い呼吸を整えて、ほんのり耳を赤らめて言う鶴紗。
初めてじゃ無いけれど、デートっていうのはこういうものなんだろう。
自然と顔は綻んで、私は荷物を漁り始めた。


「今日は鶴紗との約束、ちゃんと果たすからな」

『約束……』

「ほい」


最初に手渡ししたのは、にぼし入りの小袋。


「それから」


次に逆の手に載せたのは
沢山持って来た中から
猫の形の、鶴紗の好きなドーナツをひとつ。


「んで」


最後に出したのは、折り紙セット。
それを鶴紗の頭に乗せて


「さぁ遊ぶゾ!」


両腕を上に伸ばしてガッツポーズをする私を
呆然とした表情の鶴紗が見ている。
あれ?
そこは、はしゃいで喜ぶ所じゃ無いのか?おかしいな。

にぼしとドーナツを片手に持ち直し
頭の上の折り紙を取って


『まいさ……お姉様』

「なんだ?」

『せめてどれか一つに絞って下さい』

「えー?折角の鶴紗とのデートだから
 たっくさん遊ぼうと思ったのに」

『デー……ト』

「そうだゾ」


すると呆れ顔をしていた鶴紗の
どんどん頭は俯いて、その表情は見えなくなったけれど
耳から湯気が出そうな位真っ赤になって行くそんな様子を見て。
デートって言葉の破壊力は、鶴紗にとっては相当なものらしい。
そう、改めて気付く。


『じゃあ、ま……お姉様だったら、これら全部一緒に出来るんですか?』

「ん?無理だな」

『なっ…!……はぁ』


ただでさえ華奢な肩を落として
こちらを見た鶴紗の耳と頬は真っ赤なまま
また呆れ顔を向けて来た。

こういう所が本当に可愛いと思う。
ずっと見ていたくて、ついついからかってしまう。
もう少し素直に鶴紗と向き合って良いとは思うんだ。
思うんだけど……

それより今日は、さっきから気になって仕方が無い事がある。


「なぁ鶴紗?」

『はい』

「私は《ま》でも《まいさ》でも無いゾ」

『うっ……すみません』

「謝る事じゃ無いんだけどさ」

『まだ呼びにくくて、つい』


ドーナツと煮干しと折り紙セットを両手で持って
もじもじしながら恥ずかしそうに答える鶴紗。
まぁ、今まで「梅様」って呼んでいる時期が長過ぎたし
そりゃあ急には言いにくいよな、きっと。
どうにか「お姉様」と呼ぶのに慣れようとして
頑張ってくれているのは良く分かった。


「別に、どっちでも良いゾ」

『え、でも』

「まぁ、つい、梨璃みたく可愛く言って欲しくて
 あの時『お姉様』って呼ばせたけど」

『……』

「ミリアムだって百由様~!って呼んでるし
 鶴紗の言いやすい呼び方で構わないさ」

『……梨璃、みたいに』

「ん?」


あれ?
ちょっと鶴紗の表情が曇って来たぞ。
梨璃に反応し過ぎじゃないか?
言い方、間違ったかな……本音ではあるけれど。


『じゃあ………まい』

「え?まい??」

『どれから遊ぶんだ?』

「ちょ、鶴紗、呼び方……」

『何でも良いんだろう?だったら、まいでも良いじゃないか』

「おぉう……」


折角出来た可愛いハズのシルトが
妙に上から目線で、タメ口を利いて来る。
梨璃に嫉妬したんだろうけど……まさかこんなになるとは。

でも。
どんな事になっても、私が望んで選んだシルトだ。
可愛いとしか思えないんだよな、不思議なものだ。


「そっか。ま、何でも良いや」

『え?』

「まい、で良い。好きに呼んでくれ。
 じゃあ何からやろうか鶴紗?」


鶴紗と一緒に居るだけで楽しい。
今の私にはそれだけだ。
呼び方とか、接し方とか、そんな事で気持ちは変わらない。
シュッツエンゲルを呼び捨てで呼ぶような姉妹が居たって良い。
私だって鶴紗を鶴紗って呼んでるし、おあいこだよな。

そう納得して、噛み締めた幸せを表情に乗せて鶴紗を見ると
逆に、鶴紗はみるみる表情が悲しくなっていく。
今日の鶴紗は思った以上に変化が激しい。
すぐ赤くなったり、照れくさそうだったり、不機嫌になったり。
まるで子供の様だ。可愛くて堪らないな。


『……呼び方、慣れるまで時間下さい』

「だから別にそんなの良いって……」

『嫌です。梅様はずっと、尊敬する梅様のままだから。
 呼び捨てるなんて出来ない』

「真面目なヤツだな」

『今日を楽しみにしていたので……普通に呼ばせて下さい』

「そっか。じゃあ何からする?」

『そうですね……』


自然なままの2人で楽しむのなら、呼び方に気を遣っていたら楽しめない。
そりゃそうだよな。
鶴紗がそう選んだのなら、私はそれで良い。
私も、心から今日を鶴紗と楽しみたい。

両手に持つ、三種の神器をじっと見る鶴紗は
その一つだけを残して、それ以外を足元に置き、徐に二つに割った。
そうして。


『梅様、一緒に』

「食べるか」

『はい』


嬉しそうに微笑みを浮かべ、半分にしたドーナツを差し出す鶴紗。
私はそれを受け取って座り、鶴紗を促して横に座らせた。
2人でドーナツを頬張りながら、周りの猫達との戯れを楽しむ。
こんなささやかな幸せを、私はこれからこのシルトと共に増やして行こう。



お前に。鶴紗に逢えて、良かった。
私が選んだ、たった一人の大切なシルト。

ずーっと一緒に、笑って隣に居てやるからな。











●● fin.

















あとがき



※シブ掲載に伴い、加筆修正したものを再掲しました(12/14)


『Schatz』=シャッツ。ドイツ語。

意味は、「宝物」
そして
「ドイツで、自分の恋人や子供に対してこう呼びかける。
 (あなた・ハニーなどと同義)」

昔誰かが言っていた『僕の可愛い仔猫ちゃん』(笑)みたいな感じの意味。

言葉は似てますが
シュッツエンゲルの「Schutz(シュッツ=守護)」では無いです。
良い言葉があるなぁと、いつもながら感心してます。



こちらのお話は、普段管理人が書いている2人ではなく
ゲームイベに触発された、ゲーム上の2人を基に書いた物です。
呼び捨ての部分だけ、私好みに書いていますけど
折角公式がラブラブカップルにしてくれたので、その記念に。

もちろん「Schatz」は梅にとっての鶴紗の事。
梅が言う「デートは初めてじゃ無い」というのは
メモリア『楽しいを探しに行こう!』の時の話。

戦闘時に約束していた、この3つの約束は
結局、お邪魔虫達との緊急即席結婚式で流れてしまったので
その後でちゃんと2人きりでデートして実現しよう、となった。
という設定です。



なんの山もオチも意味も無い、ほんわか話です。
急に呼び方を変えようと思っても
思惑とは違って上手く行かないんじゃないかなと思って。
制服デートでも、私服デートでも
お好きなデートを妄想して楽しんで下さい。
気に入って貰えたなら嬉しいです
読んで頂き、ありがとうございました(´ω`)ノ



今回は、早く書いて、早々に掲載しました。
プライベッターで先行して出していましたが
加筆修正して一日でブログに転載しました。何やってんだか(苦笑)

公式ゲーで、たづまい話が出て来ない内に
妄想話を出してしまおう!という腹で (アホ)
公式が進展すると、どうにも妄想がやりにくいのです。はい。
お付き合いして下さる方が居られるなら、ありがたいです(* ´ー`)




(12/14・追記)
やっと今イベストーリー見ました。

違いますから_:(´ཀ`」 ∠):_

まさか鶴紗がデートの話を持ちかけてるなんて
今知ったんですから。
盗作じゃないっすから。
うわぁ……こういうカブり方、なんかハズイ……(失笑)

今後はこういう公式とのカブりなんかと
戦わなきゃならんのですかね……複雑な気分……
ホント、先に出しておいて良かった。
私は、私なりの2人の作品を書いて行こうと思います。


鶴紗からデートを持ちかけるのが
鶴紗なりの「甘え方」なんでしょうかね。
まぁ梅は断りゃしないですし
公式で楽しいデートして下され。




それでは。







●拍手お礼●

12/6

一日に、お2方から各一拍手頂きました
おぉぉ……一日に複数回、なんて中々頂けないので
嬉しかったです、ありがとうございました!





●ひとりごと●

これだけ書いても書いても
感想貰えないのは寂しいもんです
ホントは拡大文字にして
欲しい!って訴えたいもんですけど
言えば言う程、その可能性が下がっていくのを
経験上知っているので……中々難しいです

一縷の希望を託して
感想、意見、お待ちしております
どうか管理人に、優しい言葉を下され…_:(´ཀ`」 ∠):_


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