「告白」鶴紗視点
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初めてシリーズ・鶴紗視点。
たづまい。
前回と同じタイトルで、初めての鶴紗の告白。
鶴紗の場合も、梅を手放しで好きになるとは思って無いです。
例え鶴紗から好きになったとしても
片想いの相手を知っていて、かつ心情をくみ取れてしまう鶴紗が
梅に告白するなんて露ほども思って無い。
そうなっても恐らく……言わないで終わるんでしょう。
前回の冒頭でも言いましたけど
ほんと、私は甘々な「たづまい」が好きなくせに
いちいち辛辣な言い方してしまいますよね……
イメージはそうなので、無理矢理恋愛にする気も無いですけど
2人が2人で幸せそうに楽しそうにしてる様子を描くのが
私の趣味でございます( ´∀`)人(´∀` )
今回の鶴紗も特別に、梅に対して特別に想うように仕掛け
でも、あまりアニメの2人からの齟齬の無い様に
初めて告白に至るまでの過程を描いてみました。
こういう話、私の超好みです(*´д`)ハァハァ
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最初から勝てない勝負に挑むなんて
私はどうかしてしまったんだ。
これはきっと……あなたのせい。
「たぁづさぁ~」
『……はぁ』
何故、私と猫との逢瀬の場所にこの人が来るのか。
というか何故ここが分かるのか。
私は深く溜息を吐いた。
『どうしてここが分か……』
「梅が来る場所にお前が居るだけだゾ」
ニコニコと笑顔で悪びれもせず
胸を張って腕を組み、脚を大の字に開いて
偉そうに立っている梅様。
この人の事だからきっと……
『また私をからかいに来たんじゃ』
「良く分かったな!その通りだっ」
あははと笑って、やはり悪びれる事無くそんな台詞を言う。
胸の中がモヤっとして、無意識に眉間にシワが寄ってしまう。
「可愛い後輩が猫とちゃんと仲良くなってるかなって」
『心配いらないです』
ねこじゃらしを梅様に向け、あっちへ行けと促す。
それを見て梅様は
このねこじゃらしでじゃれ始めた。
手を丸め、ちょいちょいと猫の様に。
少し頭が痛くなって来た。
訳が分からない。この人は本当に何なんだ。
「構って欲しいんだろ?」
『え?』
「梅が居ないと寂しいくせに」
私からパッとねこじゃらしを取り上げると
今度は私に向けて振り始めた。
目の前でフリフリと動く
ねこじゃらしの先をぼんやり見ながら
ふと、そういえば最近は
梅様がいつも傍に居てくれている、という事に気付いた。
猫に夢中で気付かなかった、本当に猫しか見て無いんだな私は。
少し反省したものの、この鬱陶しいねこじゃらしを見るに
やはりからかい半分なのだろうと思うと
「寂しい」と言われた言葉の意味が理解出来ないでいた。
『別に寂しくない』
「そっか。もしかしたら梅が寂しいのかもな。
お前、猫ばっかり見てるからなぁ」
『梅様が?』
「お、やっと梅を見たな。嬉しいゾ」
言葉の意味が知りたくて、集中して梅様をじっと見ている事に
梅様の台詞で分かった。
そういえば梅様を正面からちゃんと見る事なんて無かった気がする。
興味津々に輝く翡翠色の眼差しが、真っ直ぐ私を捉えている。
それに気付いた途端、妙に照れてしまい視線を外した。
「照れちゃって可愛いな」
『からかうのはやめろ』
「からかってない。ホントにそう思ってる」
後輩の一人として。
そう語尾に付いている。そんな気がした。
この人はいつもそうだ。
先輩後輩関係無く、周りに人が集まっていて
その人達はいつも笑顔だ。
確かに羨ましくも思う。私には絶対あり得ない。
そうなりたいとも、そうなれるとも思っていないけれど
とても憧れている存在ではある。
そんな人が、わざわざ私を構いに来ているなんて。
正直……優越感を覚えてしまう程だ。
こちらを伺いながら、まだねこじゃらしを振っているので
仕方なく私も梅様同様、猫の手にして
少しだけじゃれ返してあげた。
それを見て、また嬉しそうに笑顔になった梅様は
ねこじゃらしを私に返して
しゃがんでいる私の前に同じくしゃがみ
頭を優しく撫で始めた。
これが良くあるいつもの光景。
私にはこの、頭を撫でてくれる手が特別に思えて
心の中がほんのり温かくなるのを感じるんだ……。
「梅は鶴紗が好きだからナ」
『なっ……』
これもどうせいつもの冗談だろう。
でも。
今気付いてしまった。
心に感じた温もりの正体に。
私は多分、この人を………
それに気付いたこの瞬間に
私の想いが叶わない事にも気付いてしまった。
梅様には、心に秘めた想い人が居る。
ずっとずっと大切に想って来て
シルトとのやりとりをにこやかに見ている
……ようなフリをずっと続けている。
どんなに傷付いているか知れない。
端から見ていて切なくなる位に。
私なんかが、梅様に伝えて良い言葉とは思えない。
切なさが、表情に出てしまったんだろう
それを察して、私の顔を覗き込んで
「撫でられるの、イヤか?」
『え?別にイヤじゃ……』
「好きってコトか、良かった」
『うわっ』
梅様が地面に、脚を大の字にして座ったと同時に
引き倒されて、梅様の胸に飛び込んだ私は
そのまま抱き締められてしまった。
私の眼前には梅様の豊かな胸部が、
私の頭頂には梅様の顎が乗っているようだ。
「キラわれて無くて嬉しいゾ」
『好きだなんて言って無い……』
「ヤじゃないならOKだろ」
脱出しようともがいてみるものの
ガッチリと抑えられて逃れる術が見付からない。
その内私ももがくのを止め、結局梅様の思うがままに。
私が大人しくなると、その腕は ふっと緩んですぐに解放された。
「悪かった、からかい過ぎたな」
からかい、か。
私の胸の奥がズキリと痛んだ。
一度頭を撫でた梅様の
私から離れようとするその腕を無意識に掴んだ。
『え?』
「ん?」
梅様は少し驚いたような表情をして動きを止めたけれど
本気で驚いたのは私の方だ。
何故この腕を掴んでしまったのか。
……答えは簡単だろう。
この温かい手を、離したく無かったからだ。
私は既にこの人に、特別な感情を持っていたんだ。
『……ふふっ』
「鶴紗?」
思わず笑みが浮かび、声に出していた。
梅様は、今度は不思議そうな表情で
離れようとした身をこちらに近付けてくる。
最初から勝てない勝負に挑むなんて
私もどうかしてしまったんだ。
きっと……
『梅様のせいだ』
「梅の……せい?」
『勝てないって分かってるけど』
あの人にあなたを、渡したく無い。
『梅様が………好き』
目を閉じるその刹那
本気で驚いた梅様の表情を初めて見られた
その嬉しさで心が満たされてしまった。
例え振られてもキラわれても構わないと
本気でそう思いながら
その温かく柔らかな唇を、己の本能の赴くままに。
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