「こたつ」鶴紗視点






初めてシリーズ・鶴紗視点。

「まいたづにしたい梅、そうは行かないたづまい」
って感じですかね(どーいう事??


梅がやりたい放題するけれど、天然で上回る鶴紗には勝てないって話。


初めてにしては、この方がハードル高くない?
って内容の初めてです
ネタバレは下の反転文字で。

初めての指舐め……初めてがそっちじゃ駄目じゃね?(*´д`)



コタツは猫も万人も幸せにするよね(* ´ー`)






■拍手お礼■



前回の記事・11/22と

11/26・11/27に

各1拍手頂きました!優しいお方、有難うございますヽ(*´Д`*)ノ















「うにゅ……」

木枯らしの吹き始めた外から梅様の部屋に来て
鍵が掛けられずに開いた扉を不用心だと思いつつ
中に入って部屋を覗くと
そこにはこたつにみかん、そして
梅様がこたつ布団に潜って丸くなって寝ていた。

この人は本当に猫、なのかもしれない。

幸せそうな所に声を掛けるのは躊躇するけれど
私を呼んでおいてこの為体では困ってしまう。
仕方なく名前を呼んでみる。

『梅様』

「んあ……おお鶴紗、ただいま」

まだ寝ぼけている梅様の台詞に苦笑する。

『いらっしゃい、だと思う』

「ん?そか?じゃあ、おかえり」

おかえり?
ここは私の部屋じゃないし、帰る場所では無い。
でも、もしそうだったら。
そう考えたら……
まんざらでも無い自分の気持ちに苦笑してしまった。

『もう良い。何の用ですか梅様』

さっき突然受けた着信で、ここに来いと言われた。
緊急の要件なのかと思って来てみればこれだ。
梅様の事だから、事件であっても梅様自身が解決するだろうし
戦闘関連では無いとは思っていたけれど。

「見て分かるだろ?
 ニホンの冬の三点セットを揃えたから
 鶴紗にも堪能して貰おうと思ってナ」

ゆるゆると起き、背を丸めて座ってこたつの天板に顎を乗せ
ヘラっと笑ってこちらを見る。
緊急呼び出しでは無かった事に安堵するけれど
見たままの用件過ぎて、私は眉間に指を置いた。
三点セット……こたつに、籠盛りのみかんに、梅様?
自分もセットにするのか。少し頭痛がする……。

ぽいっ。

急に目の前に投げられたオレンジの玉。
反射で受け取ってしまった、これはみかんか。

「ま、突っ立ってないで入れ、寒かっただろ?」

こいこいと、猫の様に手招きされる。
寝ぼけているのも相まって、可愛く見えてしまう。
こういう梅様はズルいと思う……

一人用のこたつの、梅様の横面に
布団をめくって入ると……そこは別世界だった。

『あったかい』

「だろ?良いだろコレ」

『良い』

入浴するに等しく、いやそれ以上の程良い温みに
幸せな溜息が思わず漏れてしまう。
ネコがこたつで丸くなる理由をこの身を持って知った。

「あーん」

『え?』

「ほら、それ」

指をちょこんと布団から出して
私が渡されたみかんを指差す。
私が食べる為にくれたのでは無いのか。

渋々、皮を剥いて一房、梅様の口許に渡すと

「ぱく!……ん~美味いっ」

『まさかこれで呼び出したの?』

「鶴紗が喜ぶと思ってサプライズでナ」

多分、単なる思い付きだとは思う。
でも。私が喜ぶ事を考えてくれた事には感謝したい。

『ありがとう』

「どーいたしまして。もう一個」

カパっと開けた口にまた一房持って行くと
房を辿って、私の指が梅の口内に吸い込まれてしまった。

『ちょ……』

「ん」

急な出来事に、驚いて声も出ない。
まだ少し冷えたままの指先が
唇で食まれ、温かい口内で舌がゆっくり絡み付く。
弄られている感触に、背筋がぞくりと反応した。
梅様は上目遣いで食んだまま私を見ている。
妖艶な視線を浴びて、驚きを超えて恥ずかしさを覚え
私はようやく指を引き抜いた。

『な……』

「ん、最高に美味いな」

ぺろり、自分の唇を舌で舐める。
どうしてこの人はこうも悪戯ばかりするのか。
驚きと恥ずかしさを超えて、少し怒りも湧いて来る。
まだ……キスすらした事も無いのに。

「もう一個」

まだ強請るのか。
流石に私も、一方的にやられるだけではつまらない。

『これは私のだ』

取った一房を、その指と共に口に銜えた。

「あ」

思わぬ行為に驚いた梅様の目が丸くなった。
少しやりかえせた気分になって嬉しくなる。

このみかん、そこまで甘くない。少し酸味が強い位だ。
そんな表情する程美味しいとは思えない。
不思議な人だな。
そう思いながら、指を銜えたままみかんを味わっていると
気が付けば梅様の耳輪がほんのり赤くなっているのが見えた。

そんなに私がみかんを渡さなかった事が悔しいのだろうか。

「イタズラして悪かった、だからもう良いだろ?」

『何が?』

「その、指」

『指?………あ』

ああそう言えばこの指は、梅様に食べられたんだ。
やりこめる事しか考えていなくてすっかり忘れていた。
逡巡している間、銜え続けていた指を
小さなリップ音と共に口内から引き抜き

『美味しかった』

自分なりに微笑んで梅様に伝えると
今度は頬まで真っ赤にして項垂れて

「梅の負けだゾ」

両手で降参のアピールをされた。
そんな意図は無いけれど
こんなに自由気ままな梅様に勝ったという妙な優越感を覚えた。

『今日はこたつに免じて許してあげる』

先輩に言う台詞では無いし、何を許して「あげる」のか。
おかしな自分の言い方に、心の中で苦笑した。
梅様はそのまま頷いて

「うん、ありがとな」

にぱっと、花が咲いたように嬉しそうに笑う。
梅様の、無邪気な笑顔を見る度に
私はこの人への「好き」を膨らませて行く。

私も、この人に既に負けているんだ。

『ねぇ……まい』

「え?」

『こっちには?』

その指をまた、まいの唇に置いて言うと
瞬きを何度かしてから目を細め、指を握られて

「良いのか?」

指を舐めておいて言う台詞じゃないと思うけど。

『順番が違う』

「ごめんな」



幸せそうな表情で近付いたそれに触れられて
想像以上の柔さに眩暈がした。

まいが言った事は本当だったんだ。
さっき感じた酸味は全く無くて

ただただ甘いだけだった。












こたつでしばらく楽しんだ後。



『まい、最初に寝ぼけてたよね』

「そうだっけ?」

『おかえりって』

「別に間違ってないゾ」

『よく来た、とか いらっしゃいだと思う』

「んー……
 そうなったら良いなって」

寝ぼけて無かったのか。
わざと言うなんて本当に人が悪い。
でも。

『私も、まんざらでも無かった』

「へ?」

『いつか言えたら良いな』

「………プロポーズ?」

『どうしてそうなるの???』









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